喪失:なくす、失うこと

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「ただいま」
ただの一言は
誰に受け止めてもらえるわけでもなくさびしげに響く・・・・


そんなことはいつものことで。
あふれ出しそうになった何かが
ココロの何処かに閉じ込めた何かに塞き止められた

いつものことなのに・・・
変わることのない
この虚空感。
体の何処かにぽっかりと穴が開いたような、そんな・・・・


あたしの思考回路をかき消すように、けたたましく鳴り響く着信音

反射的に手に取った携帯画面の先に映る「南部庵」(なんぶいおり)の
文字を見た瞬間に、対応ボタンを押すのをやめた

これもまた、いつものことで。
鬱陶しいくらいに鳴り響くその音にうんざりしていた

とにかく汚れた身体を洗うべくバスルームに向かう
シャワーを全開に出して、
歯磨きも、シャンプーも、ボディーソープも・・・


汚れに汚れたすべてを・・・
落ちない汚れだと知っていても、気休めになればと・・・・


こんなに・・・
こんなにも。どうして汚れてしまったんだろう?
女の子のほとんどは、〝体の関係”である


女の子と寝ないと、というよりも
誰かがそばにいることで、何かをかき消し続けていた

一人では眠ることができない
無駄なことを考えてしまうから。

その無駄なことというのは、思い出したくもないのだけれど。



すべては男の所為だ


全部全部

あたしのすべてを変えたのは
あたしを汚れさせてしまったのは



――――――――――ほかならぬ男だ