「ねえ。橋くん、まだ帰らないの」 私はベッドに横たわる背中に声をかけた。 「菅居もしかして今ネイル塗ってる?シンナー臭いんだけど」 「やってるけど。てか話そらさないでよ」 「ん―」 次に返ってきたのは生返事。 「橋くん」 「ん―」 「ネイルってシンナー臭いの?」 「多分。てかなんにしろ臭い」 「へぇえ」 私は扇風機の風向きを変えてわざと彼の方に向けてやる。