12時過ぎ――
会社で待っている阿川さんの元に、明人がバタバタと帰って来た。
「あ、阿川さん。
遅くなってごめん。少し仕事が押してしまって…」
本当は、本屋で市内のグルメガイドブックを読んでいただけだ。
「いえ、大丈夫ですよ」
笑顔で応える阿川さんを見てホッと胸を撫で下ろすと、明人は急いで外に連れ出した。
「じゃあ、昼休みはあまり時間ないし、早く行こう!!」
明人は阿川さんを営業車の助手席に乗せると、すぐに発進した。
「遠いんですか?」
「いや、もう目の前に見えてるよ」
「見えてる?」
阿川さんは前方を見たが、飲食店らしきものは見当たらなかった…
.



