「どうしたんですか注文書?」

「あーあれ?
橋本さんにあげた」

「あげた…?」


淡々と話す明人の言葉の意味が、阿川さんは分からなかった。

「うん。
あと200万円あれば、営業成績で全国ベスト10に入れるって言うから、あげた」

「え…
あげちゃったんですか?
ポポロに報告するって、喜んでいたじゃないですか?」


明人は意外にもスッキリした表情で、阿川さんの方に向いて笑った。

「ベスト10なんて、なかなか入れるものじゃないし、今日が締めだから明日はないしね。

橋本さんの役に立てられれば、それで良いよ」

「で、でも!!」


明人は阿川さんの顔の前に手の平をかざして言葉を止めると、珍しく少し怒った表情をした。

「僕は今まで、会社や同僚に対しても足は引っ張っても、役には立ててない…

少しは役に立ちたいんだ。


それに…
契約はまた取れば良いだけだよ。僕にはポポロがついているしね!!」


明人は線が細く存在が薄いが、意外にも性格は骨太だった。


.