鏡をほとんど見る事がない明人は、久しぶりに見る自分の姿に、(誰にも分からない例えだが)ジャッキー・チェンの初期作品に必ず出ていた赤鼻の老師を思い出した。
「こりゃヒドイ…」
「それじゃいきますよ~!!」
明人が店主の声に、ハッと我に返り鏡に映る自分の背後を見ると、オノを振りかぶる男の姿があった。
「ちょ、ちょっと!!」
明人が慌てて振り返りオノを掴むと、店主は不機嫌そうに言った。
「あんたが頭切ってくれって言うからさ、これで一気に…
そのあとは、あんたの預金を全額引き出して、海外に逃亡――」
「ち、違うでしょ!!」
「あん?
チェーンソウの方が良いのか?
どっちも痛いぞ?」
「そうじゃない!!
頭ってのは、普通髪の毛でしょ!!」
店主は残念そうに笑うと、オノを椅子の下に置いた。
「冗談に決まってるでしょ、ははは!!
チッ…」
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