ケータイ小説作家に恋をしました。2


侍町は、この辺りではオフィビルが集中している地区で、駅で下車する人も駅前を歩いている人も、スーツ姿のサラリーマンが多い。

駅前通りを渡り、駅から垂直に伸びる道路5分ほど歩いた場所にあるグレーのオフィスビルが、明人の勤務先がある。


海山商事。
大手事務機メーカーの、販売子会社である。

決して、○平さんの勤務先ではない。



「おはようございます」

明人は、既に開いていた1階の表玄関から中に入った。


「相変わらず辛気臭い奴だな。

ただでさえ色白でヒョロヒョロしてエノキダケみたいなんだから、挨拶くらいはシイタケみたいに元気よくしろ!!」

直属の松竹課長は、大のキノコ好きだ。

「は、はい」


明人は何をどう間違えたのか、仕事は事務機の営業だった。


入社して2年…

明人の販売実績は、コピー機のトナー2本だ。


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