ケータイ小説作家に恋をしました。2


まさか…
隣の車両から、怪しげな白装束の人達が入って来て、僕を取り込み――

「シャーコ、オー!!
シャーコ、オー!!
声が小さい!!
手拍子はどうした!!」

挙げ句の果てに、捕まって遠い異国の街に売られ――

ドナドナドナドナ…

ダメだ。
僕は、日本語しか話せないから、知らない国でのたれ死ぬんだ…


いや明人、それは絶対ないし。



明人がふっと我に返ると、その怪しげな掛け声は聞こえなくなっていた。

それもそのはず、涼太…いや、隣の車両で騒いでいた集団のリーダーは、既に下車した後だったのだ。


「…次は侍町、侍町。お降りの方は…」

不意に流れてきた車内アナウンスに、明人はすっくと立ち上がった。


「降りないと…」


明人の電車を降りると、駅から5分ほど離れた場所にある勤務先に向かった。


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