ケータイ小説作家に恋をしました。2


「行ってきます」


明人は営業鞄を持ち裏口から出ると、白い軽自動車に乗り支社を離れた。

とはいえ、明人が向かうのは30キロ以上離れた場所にある海辺の公園。

途中のコンビニで弁当とお茶を買い、毎日夕方まで時間を潰す…


明人は営業センスがないという訳ではなく、仕事自体をしていない。

サボっているというより、以前自分が立ち寄った会社が翌日倒産した事があり、行く気にならなかったのだ。



いつもはテトラポットの上にションボリと座っているのだが、今日はヒデェ妄想彼氏が一緒だ。

車のシートを倒して本を開く…


明人はずっと、今のままで仕方がないと思っていた。
それしかないと思っていた。

でも…


このヒデェ妄想の男に彼女ができる話を読み、少し考え方が変わり始めていた。

こんな不幸を呼ぶ男でも、理解者がいるかも知れない…


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