ケータイ小説作家に恋をしました。2


「いやこれは、ヒデェ妄想彼氏っていう――…」
「あ――!!
ケータイ小説でしょ?
知ってますよ!!」


明人は動揺した。
余りのテンションの高さと、満面の笑みに…
と同時に心配になった。


この人は、僕のネガティブパワーをこんなに間近で受けて、大丈夫なのだろうか?

もしかしたら、午前中に正体不明の新種の病原体に感染している事が分かり、病院に搬送とか…

帰宅途中に熊に襲われるとか…


そんな事を考えているうちに、自分で自分が嫌になり、またいつもの奈落の底に――


「――…じゃあ、営業活動頑張って下さいね!!」

寸前で派遣社員の声に救われ、明人は奈落の縁で止まった。


不思議な人だ。
僕のネガティブパワーをはねのけ、更に地獄の闇にまで手を伸ばしてくるなんて…

確か、阿川って言ったよね。


普段、人の名前を覚える事がない明人だったが、その派遣社員の名前はインプットした。


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