翌日――


明人が会社に着き入口の扉を開けると、中から明るい笑い声がしてきた。


こんな事は珍しい。
営業成績を壁に貼られ、毎日怒鳴られる会社はたいてい朝からドンヨリしているものだ。


「おはようございます」

明人の挨拶に、当然の様に気付かない男性社員達。

しかし――


「おはようございます!!」

明人は驚いて、お約束の様にロッカーにぶつかった。

この会社で明人の挨拶に気付き、なおかつ挨拶を返してくるなど前代未聞だ。


明人は声のした方を向くと、挨拶の主は昨日きたばかりの派遣社員だった。

他の男性社員達と、すっかり打ち解けて談笑している…


多分――

明人が他の社員と2年間で交わした言葉よりも、派遣社員が今朝交わした言葉の方が多い。


明人、
存在感無し…
営業成績限りなく無し…
彼女も当然無し。


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