ケータイ小説作家に恋をしました。2


駅前の居酒屋を出て、花束を持って明るく手を振る阿川さんに、明人は話し掛けようと思ったが止めた。

何を話せば良いのか分からなかったし、何を言っても仕方がないと思った。


自分の前からいなくなる事を止める権利もないし、止める理由もなかったのだ。

同じ職場で働いた同僚が退職するだけのことと、何も変わりはしなかった。



結局、明人は職場の人達の群れのいつもの外れた位置で、駅へと消えていく阿川さんを見送った。


送別会が終わり、事務員が1人いなくなり、明日からは別の事務員がやってくる。

ただそれだけの事だ。


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