女子の決勝が始まった。
選手たちはもちろん勝ちたい。
コーチは勝たせたい。
父兄は、勝って欲しい。
それぞれの思いがコートに集まる。

選手たちはゴールを目指して走る。
コーチは指示を出す。
父兄は声援を送る。
チームが1つにまとまっているように見えた。

前半終了で25対5。
後半は、菜月が入ったベスメンで登録。

ゴール前でボールを待つ美咲と菜月。
どうしても相手チームとしては、菜月より背が高く、チームの中心である美咲に警戒をする。
よって、菜月がフリーになることがあり、美空や裕実·美和はタイミングを見て菜月にパスを入れる。
菜月はそのままシュートをしたり、無理だと思えば美空や裕実にボールを戻したり…。4人の連携がうまくとれていた。
一方、美咲はそれが面白くない。
ゴール前では2人がかりでマークされ、なかなかボールに触れない。
そんな中、菜月にばかりパスが行くのが納得できなかった。
『私の方が菜月より上手なのに!』
そう思っていた。

また裕実からゴール前の菜月にパスが渡り、菜月がそのままレイアップを決めた。

「菜月、ナイッショ!」
拓海の声が聞こえた。

「美空ちゃん、裕実ちゃん。私にもパスをちょうだい」
ディフェンスに戻りながら、美咲は2人にそう言った。