「ぐふっ?!」




あまりにも突然で唐突な質問に、口の中に入っていた玉子焼きがリバースするところだった。









彼氏は……いる、表向きだけど…。





大嫌いなままで、利用されるだけされて後はサヨウナラ。


そして早く私の嫌な思い出として消し去る。



…それで良かったのに。





あのホテルでの出来事があって以来、
確実に私の脳裏に焼き付いてくる奴の姿。






何故か、彼と同じように、彼を
『もっと知りたい』
と思う今の自分を不思議に思う。









「…若菜チャン?」





目の焦点を合わさずに、
完全に自分の世界に入ってそんなことを考えていると、


華チャンの一声で私はなんとか現実へと帰還した。






「あっ、ごめん!ι
彼氏は、いないよ?」



会って早々ウソをついてしまった…。




でも、もし"いる"って言ったとしても、
「誰?」と名前を訊かれるし、



…華チャンの役での恋人・世良修吾なんて、


口が割けても言えない。







だから"いない"と言っておけば、
話はそこで終わるかと思った。





返事は「あーそっか」とか、話題を繋げるとしても「じゃあ好きな人は?」とか訊かれるくらい。








…しかし、華チャンから返ってきた言葉は、
私の予想を見事に裏切った。










「嘘つき。」