ここにいるよ

歩いてると突然、背後から彼を呼ぶ声がした


私は、咄嗟に振り返る


そこには、整った顔立ちで長身の男の人が立っていた


少しガラが悪そうにガムをクチャクチャしながら陽気に話しかけてきた


「あれ〜♪原田君じゃん♪何してんの?」


「大川…」

忍も振り返ると知人らしく彼の名前を呼んだ


少し顔を曇らせた彼を私は見逃さなかった


「覚えてくれてたんだ〜♪嬉しいね〜♪」


「………」

その大川って人はケラケラ笑いながら近付いてきた


忍はギュッと繋いだ手を強く握った



忍…??

どうしたの?

二人の間に殺伐とした雰囲気が漂う


忍は無表情で何も言わず


「………」


!!!

ビクッ

忍の顔を覗き不意に視線をずらし大川さんを見ると一瞬鳥肌が立ち身震いしてしまった



な、何…この人…

声は笑ってるのに顔が笑ってない


不気味で怖くなって繋いだ手を強く握り返した


「へぇ〜!原田忍に本命が出来たと聞いたけどこの子がそうか〜♪まあまあ可愛いじゃん」



そう言いながらいつの間にか私の髪を触り不気味な笑顔から無表情な冷たい表情に変わった



「触るな」

忍は勢いよく大川さんの手を振り払う


「い、いて〜」

「………」

みるみる無表情から怒りに満ち溢れて睨み合う二人


忍のマンションのすぐ下の長い坂道でコンビニ袋をぶら下げ時間が過ぎてく



「悪いけど俺達行くから」


淡々と言い放ち私の肩を抱きその場から歩こうとするとまた背後から笑い声がする



「………ドロボウ」


嘲笑い歯を食いしばる大川さんは、火がついたかのように話し出す


忍は彼の声でその場に立ち止まった


振り返らず無表情の忍の顔を覗く


「忍…?」