「ホラッ!早く!」

忍が急かすから彼女も慌てる



「…さっきは誤解して乱暴に扱ってごめんなさい…」


背中越しに聞こえる声は先程とは違い優しい声だ


「ごめんね…こいつも悪気はなかったんだと思うし…許してやってくれる?」


またいつもの笑顔で顔を覗くから首をまた無意識の内に縦に振ってしまう



この笑顔にはどんなに悲しくて不安定でも許してしまう



でも、彼女の存在はまだ分からなくてモヤモヤした



「原田涼子…俺のイトコ」


ボソッと忍が彼女を見ながら呟く


は?

今…何て…?

必死に忍の言葉を理解しようと整理する


「あ…違った!俺と一樹のだった…訂正」


ペロッと舌を出して笑ってる


「もういいよ!私…仕事あるから…じゃあね…」


そう言いながら、彼女…涼子さんは去っていく


忍もため息一つして先に楽屋へ入ってる


私は先程の殺伐した雰囲気からまだ気持ちは晴れず少し廊下で立ってると涼子さんが気になり振り返る



!!!

一瞬でまた体が凍りついた


彼女…涼子さんはエレベーターの前に立ちこっちを見てる


冷たい視線に身動きがとれない



「渚ちゃん?何してんの?」

楽屋から忍に呼ばれて我に返り急いで楽屋へ



ねぇ…

忍……

涼子さんはただのイトコなんかじゃないよ


あの行動

あの視線

涼子さんのあの瞳は

ライバルに向けるむきだしの嫉妬心なんだよ

私には分かるんだ…


ねぇ…忍…

私…強くなるよ…

涼子さんにも誰にも負けないぐらい強く


そして不安定になった時にはまた笑ってみせて


その度に私は世界一の勇気をもらえるから



キュッと口を噛み締めて忍が待つ部屋へ入った