ここにいるよ

「忍…人が見てるよ、離れないと」



「分かってるけど…無理」

「え」

「離したくない…」

道端で抱き合う二人

通行人がジロジロ見てくる



恥ずかしいんだけど忍の胸の中にいると不思議と気にならなかった



忍の想いに嬉しくて涙が出てくる



「俺…マジ、やばい」

「えっ…」


「渚ちゃんの事、好きすぎてどうにかなっちゃうよ」


そう言ってまた強く抱きしめられた


嬉しい

幸せ

そんな言葉じゃ表現出来ない



こんな気持ちは初めて知った



「私も…好き…」

「うん」

肌寒くなったんだけど

大好きな人の胸の中は特別


カイロみたいに温かくて安心する


笑顔がこぼれてもっと強く抱きしめた



それから手を繋いで家まで送ってくれた


帰っていく忍の背中はとても広くて今すぐにでも走って抱き着きたかった



もう会いたい

今、会いたい

離れたばかりでも…


吐く息が白く残る寒空の中、忍の背中が見えなくなるまで外で立ち尽くしてた



忍の姿が見えなくなりため息ついてがっかりしてると


ブルルルッ……

携帯が振動した

慌てて画面を見ると

「忍…?」

すぐに電話に出た

離れたばかりなのに

彼からの電話で舞い上がる


『忍…?どうしたの?』

『早く家に入りなっ!危ないから』


『で、でも…』

『渚ちゃん?』

『なんか、もう淋しい』

『俺も…』


『さっきは…我慢するなんて…言ったけど…やっぱり無理だよ…離れた一秒でも…こんな…』



『泣いてるの?』


忍の質問で気付く

いつの間にか涙が頬を伝い寒くて鼻も頬も真っ赤になってた



忍の声が優しくてまたより一層涙を誘った



こんなにも意志が弱かったなんて思わなかった


本当は淋しくて独占したくて自分の中でギリギリだったんだなと改めて知る