そしてその後も、先生の話を聞いたり、この学校の過ごし方について聞いたりして、あっという間に放課後になった。

「堂坂!」

野宮さんは、大きな声で私を呼びながら、机に勢いよく手をついた。
少し驚いたけど、私は読書をやめなかった。

「堂坂? んー、あ! 読書中だからか〜、悪りぃな!」

野宮さんは、1人でそう言うと、自分の席(私の隣の席)に座った。

「どうしたの。早く帰らないの?」

私は、本から目を離さずに言った。
なるほど、恋愛というのは……とても面倒なものなのか。しかし、その面倒さよりも、幸せなどの感情が勝ると……。

「俺さ! 堂坂と一緒に帰りたいんだよっ」

その言葉に私は少し驚き、本を落としてしまった。
野宮さんは、素早くそれを拾って、笑顔で私に返してくれた。
……笑うと、可愛いのね、改めて見ると。

「……ありがとう。それより、野宮さんの家はどこなの?」
「あー、俺? 俺さ、実は今年からここに引っ越したばかりなんだけどね? 桜町の5丁目なんだ!」

桜町の……5丁目?
それって、私の家のすぐ近く、じゃない? すぐ近くどころか、玄関を出た先の道路……そこで、5丁目か6丁目かで分かれるんだから……かなり近い。

「堂坂? どしたの?」
「野宮さん。どうやら私たちの家、近いみたいだよ」

私がそう言うと、野宮さんはガッツポーズをした。ラッキー! と、笑顔ではしゃいでいる。

「そんなに嬉しい? まぁ、1人で帰るよりかは良いだろうけど。でも野宮さんなら、すぐに友達出来そうだけどね」

野宮さんは、私の言葉には耳を貸さず、私に早く帰ろう、と急かして来る。
こいつ、仲良くなると鬱陶しいやつだ。と思いつつも、自分も少し嬉しいと思っていることを、隠そうとしていた。