自己紹介の時間も終わり、今は休み時間。早くも、仲良しのグループが出来たところもあれば、1人でどこかを見ている人も居た。
本当だったら、私も1人だったんだよなぁ、と思いつつ、野宮さんを見た。

「堂坂……?」

私が野宮さんを見つめていると、野宮さんが、不安そうにこちらを見つめ返した。

「あぁ、野宮さん。どうかしたの?」

私は、なぜ声をかけられたのかわかっているけど、知らないふりをした。
野宮さんは、少し目線を逸らしたあと、またこちらを見つめた。

「どうかしたの? じゃないよっ! ずーっとこっち見てるから、俺なんかしたっけなーって思って」

なんかしたのは私の方だ。
と言うのは、私のプライドが許さないので。

「なにもしてないよ、安心して……」

私がそこで、言葉を止めたのが悪かったのか、野宮さんは慌て始めた。
私が言葉を止めた理由は、とても簡単なことだった。
……女子の目が怖い、ということ。
さっきから、女子がこちらを睨んでいるとは思った。だけど……ここまで多いとは。
原因は、野宮さんだね。確かに、顔整ってるもんね。

「野宮さん。私は怒ってもないし、野宮さんも何もしてないから大丈夫。それより……他の人とも喋ってみたら?」

そう言うと、野宮さんは一瞬だけ暗い顔をしたけど、すぐに笑顔になり、頷いた。
少し気になったけれど、私も笑顔で頷いてから、読書を始めた。
野宮さんは席を立ち、男子の所へ行った。

私はその背中を見送りながら、今後のことを考えていた。