「……覚えてないの?」
俺は確認するようにナツに聞いた。
「うん。ご飯食べて……それからお酒飲んでたのは覚えてるんだけど……途中から全っ然覚えてないの」
……何となく、こうなるんじゃないかとは思ってたよ。
前と同じようにナツを酔わせたら、前と同じように記憶飛んじゃうんじゃないかって。
例え、どんな激しいことをしてもさ。
それが見事的中した。
できれば的中してほしくはなかったのに。
更に言えば、何もしてないのに。
「あたし、ホント何もしないで寝ちゃったのよね」
うん、そうだよ。昨夜はチューと軽いペッティングだけでなーんもしなかったんだよ。
「昨夜の片付けもしてなかったし……お風呂も入ってなかったし」
ああ、なんだ。そっちの話か。
で、いつ起きたかしらないけど、俺が寝てる間に綺麗にして、シャワーも浴びてきたってとこか。
あーあ……なんか、振り出しに戻るって感じ。
「旬も、昨夜シャワー浴びてすぐ寝たんでしょ」
ナツがベッドの端に座った。
「何も着てないし……すごい寝ぐせついてる。ちゃんと髪乾かしたの?」
そう言って俺の頭を撫でた。
呆れたような言い方でいつも通りのナツだった。
優しい撫で方も手の感触も、俺が大好きなものと、なんら変わりない。
「ナツ……」
俺はナツの体を抱き締めた。
ナツは驚いたようで、小さく悲鳴を上げた。
「旬? 何、どうしたの?」
「……したい」
それだけ言って、俺はナツをベッドに押し倒した。
「きゃあ! ちょっと旬、何……んっ」
ナツの言葉を、俺はナツの唇こと飲み込んだ。
「ナツ、しよう?」
「えっ……」
主語がなくても、この状態にこの言葉だけで、ナツの顔は真っ赤になる。
「ちょっと何言って……朝からなんて……旬、寝ぼけてるんでしょ」
「寝ぼけてない。我慢できない」
俺はナツの首筋に顔を埋めた。
「ちょっ……や、あっ……」
ナツの声が高くなった。
もう我慢の限界だ。


