部屋に戻ると、旬が電気ヒーターとこたつを占領していた。

 正方形の、決して大きなこたつではないのに、全身をこたつの中にもぐりこませ、唯一出した顔を、ヒーターのまん前に出している。


「旬、何てかっこしてるの」

 それがいつものことではあるが、奈津美は呆れながら旬に言った。


「だって……さみーんだもん」


「それは分かるけど。窮屈じゃないの?」


「寒いよりマシ」


「……ああ、そう」


 奈津美はため息をつきながら、ドライヤーとヘアブラシと鏡を持ってこたつに向った。


 夏場は洗面所で髪を乾かすのだが、冬場は足元が冷えてくるので、リビングで髪を乾かすようにしているのだ。

 奈津美はいつものようにこたつに足を入れようとした。


「イテ!」

 入れようとした足が何かにあたり、それと同時に旬の痛がる声がした。


「あ、ごめん。蹴っちゃった」


「もー。ナツー!」


「きゃあっ!」

 勢いよく足首を掴まれ、奈津美は驚いて肩を震わせる。


「もー! 旬!」


「へへっ」

 奈津美が怒ると、旬は面白がって笑った。


 そして、旬はこたつにもぐり込み、ごそごそと動いている。


 途中でゴンッと鈍い音がしてこたつが動き、旬の「イテッ」というくぐもった声がした。


「……頭打ったー」

 旬が、奈津美が足を入れているところから顔を出した。


「何やってるのよ。寒いからって横着しないの。ていうか、いちいち動かなくたっていいでしょ」

 このせまいこたつの中でどうやって動いたのか。


「だってナツがドライヤーやってたらあったかいんだもん」

 そう言って旬は奈津美の膝に顔を乗せた。


「もう……」

 奈津美は呆れてため息をつきながらも、そのままドライヤーのスイッチをいれた。

 奈津美が髪を乾かしている間、旬は大人しく奈津美の膝の上で寛いでいた。


 途中でちらりと見ると、目がとろんとしていた。


 眠くなってきたのだろうか。


 そんな旬が可愛らしくも見えてしまう。