ちょっと……どうしたらいいのよ!?

 抵抗しようにも、今唇を離したら悲惨なことになるだろう。


 まさか……飲めっていうの? 飲むしかないの!?


 眉間に皺をよせ、奈津美は半分パニックになりながら苦悩する。


 いくら彼氏の……旬のものだからといって、抵抗がある。

 いつもの深いキスとはまた違うのだ。


 ……もうっ! 旬!!

 逡巡しながら、奈津美は覚悟した。


 ぎゅっと目を閉じ、旬のTシャツの袖を握りしめた。


 ゴクリ……と喉を鳴らして奈津美は飲み下した。

 その時、喉につっかえるものがあって、奈津美は目を見開いた。


「うっ……ゴホッ……!」

 奈津美は唇を無理矢理離してむせ返った。

 チョコレート本体のことを忘れていた。

 口内で大分小さくなっていたとはいえ、丸呑みするのには少しつらかった。


 ていうか……飲んじゃった。


 奈津美は一人で赤面する。

 自分で思っておきながら、何だか卑猥なことをしてしまった気がするのだ。


 ていうか、普通のことじゃないよね、こんなの。


「うっへぇ~……苦ぁ……」

 旬は眉間に皺を寄せて舌を出している。


「……ちょっと。人にキスしておいてそんな顔しないでくれる!?」


 勿論、旬がそんな表情になったのはチョコレートの中に入っていたコーヒーのせいなのだが、奈津美の思っていることも知らないで、そのことしか気にしていないのは癇に障る。


 これじゃあ、あたしだけ意識してるみたいで恥ずかしいじゃない。


 奈津美は旬から視線を逸らした。


 旬って、いっつも変なこと考えてるみたいで、そうでない時もあるから困る。