旬はチョコレートを一つ取り出して、口に入れた。


 何だ、結局旬が食べるんじゃない。

 奈津美はそう思って旬を見ていた。


「ナツ」

 口にチョコレートを含んだまま、旬は奈津美の腕を掴んで、その体を引き寄せる。


「何?」

 旬が何をしたいのか分からないまま、奈津美は旬の脚と脚の間に座らされた。


 旬は何も答えないまま、奈津美の背中と頭の後ろに手を回し、そっと抱き寄せた。


 顔が近づく。何をされるのか、すぐに予想できた。


 しかし、抵抗しようとする前に、奈津美の唇が旬の唇に塞がれた。


「んっ……」

 声にならない声を漏らしたが、旬に頭を押さえられているので、体を離すことが出来なかった。

 旬は舌で奈津美の唇をこじ開け、自分の舌を奈津美の口内に差し入れた。


 チョコレートの味がする。旬がさっき口にいれたやつだ。

 甘ったるい口付けに、むせ返りそうになる。しかし、抵抗もできない。


 長く深いキスからやっとのことで開放される。


「……なっ……ちょっと……」

 奈津美は真っ赤になって、何か文句の一つでも言おうとしたが、上手く言葉にならない。


「これで半分こできるだろ?」

 旬はにっこりと笑いながら言った。


「なっ……何が半分こよ!」


 確かにチョコレートの味は分かったが……これではほとんど口移しではないか。


「あと八回チューしたらちゃんと半分こできるし。あ、先に食べるのはナツが一個多くてもいいよ」


 旬の場合、キスするということが目的なのではないだろうか。