「ねえ、旬。チョコ食べる?」

 晩御飯を済ませたあと、奈津美は旬に言った。


「チョコ? うん、食べる食べるー!」

 旬はすぐに目を輝かせて答えた。

 奈津美は予想通りのその反応を見て思わず頬を緩める。


「カオルにね、お土産でもらったの。有名なお店のやつで、すっごい美味しいんだって」

 そうやって言いながら、奈津美はカオルに貰ったチョコレートの紙袋を持ってくる。


「おお~。何か高級そう」

 光沢のある白地に、金色のブランドのロゴ入っている紙袋を見て、旬はそんな感想を述べる。


「確かにちょっとね」


 奈津美も、あまりしょっちゅうは食べないちゃんとした店のものなので、頷いた。

 紙袋の中身は、白い正方形の箱で、紙袋と同じロゴがついている。

 箱についているシールをはがして、奈津美は箱を開けた。


「あ、可愛い」

 思わず顔が綻ぶ。


 3×3の仕切りをされた箱の中に、小ぶりの粒が並んでいる。

 色形がさまざまで、見ているだけでも楽しい。


「ホントだー。あ、でも分けらんねえな」

 旬の言うとおり、数が九個である上に、それら全部の種類が違うので、綺麗に分けることは出来ない。


「いいよ。旬、好きなの食べて」

 奈津美は旬の前に箱を置いた。


「えー。ナツが貰ったのに……」

 旬が少し不満そうに言った。


 そう言うだろうということは、予想がついていた。


「でも分けられないもん。いいよ、旬、食べたいの食べて?」


「えーでも……あ。そうだ」

 旬の表情が明るくなった。


「いいこと思いついた」

 そう言ってニンマリと笑った旬を見て、奈津美はなんだかいやな予感がした。