「……ねえ。何やってんだろう、私達」

 急に現実に戻ってあたしはは言った。


「何って、花見じゃん」

 さも当然というように旬は言った。そして、真ん中の白い団子をぱくりと食べている。


「これが花見?」

 傍から見たら、絶対にそうは見えない。

 まだまだ冬景色である公園で、しかもそんなに人の居ない街中の公園で、ベンチに座って団子を食べるあたし達は、一体どのように見えるのだろう。


「ナツ、分かってないなー」

 旬はもぐもぐと口を動かしながら言った。


「何が?」


「満開の桜の下で、普通に宴会騒ぎでやる花見もいいけどさ。こうやって今年最初の、誰も気付いてないかもしれない桜を静かに見て楽しむってのがいいんじゃん。なんか通っぽくて」


「……ああ、うん。なるほどね」


 確かに、旬の言うとおり、花見の宴会みたいに、花なんて関係なしに飲み食いして騒ぐより、この方がよっぽど風情があるとは思う。


「でも、通っぽいってだけ?」


「うん」

 最後の緑の団子を、串を横にしてくわえて抜き取った。


 何だか旬らしいというかなんというか。