ある休日に、旬から唐突に電話がきた。


「ナツ、今から出られる?」


「え? うん。大丈夫だけど……旬、バイトだったんじゃないの?」


 ほんの十分ほど前に、旬から

『今からバイト行ってきます』

 ……て、メールがきたばかりだったのに、何で今また電話なんかしてきたんだろう。


「いいからいいから。んじゃ今すぐ出てきてくれる? △△町のとこの公園にいるから」


「公園?」


 何で公園なんかにいるの?


「んじゃ、待ってるから」

 旬はそれだけ言って、さっさと電話を切ってしまった。


 何なのよ。いきなり電話してきて何も言わないで……

 とりあえず、呼び出されたから、行ったほうがいいのよね。


 あたしは出掛ける準備をしようとした。


 軽くでも化粧をしようと思ったけど、旬は急いでいたみたいだし、眉毛を書いて、リップだけ塗り、コートを羽織ってすぐに部屋を出た。



 △△町っていったら、旬のバイト先のカフェのある辺りだ。

 旬はこれからそこのバイトだったはず。

 なのに公園なんかで何やってんの?


 公園に着くと、旬を探した。

 遊具があるわけではない、そんなに大して大きな公園でもないから、誰もいなかった。

 旬の姿もなかった。

 ……ちょっと。人を呼び出しといていないってどういうことよ。


「あ、ナツー」

 聞きなれた声が聞こえた。

 声の方を向くと旬が無駄に大きく手を振りながら歩いてくる。


「ちょっと……どうしたのよ、いきなり呼び出したりして。バイトなんでしょ?」


「うん。そうなんだけど。どうしても見せたいのがあって」


「見せたいの?」

 あたしは首を傾げた。

 こんなところで? わざわざ呼び出ししてまで?


「ちょっとこっち来て」

 旬はあたしの手を引いて、公園内で移動をする。