しょうがなく、奈津美はワンピースを試着することにした。



 ……やばい。

 着てみてから、奈津美は後悔した。


 やっぱり着るんじゃなかった。
 何とか言い訳をして、断ればよかった。


 本当に、着てみるだけのつもりだった。

 絶対に似合わないとばかり思っていた。


 しかし、実際に着てみると、意外といいんじゃないかと自分で思ってしまった。


 いつもワンピースを着るときに悩む、太って見えることが、そんなに気にならない。

 胸の下で切り返しがあるせいだと思うのだが、それも胸を強調し過ぎることもない。


 久々に気に入ったワンピースに出会ってしまった。


 落ち着いて、私。

 今日は服を買う予定じゃなかったでしょ? それに、服なら先週辺りにも買ったでしょ?

 今日はパンプスを買う予定だったんだし、予定外の余計なもの買って無駄遣いしたら後々困るんだからっ!

 そうよ! 予定外の……余計な…………もの、を……


 つい、鏡の中のワンピースを見ると、その決心が鈍ってしまう。



「ナツー? まだー?」

 外で旬の声が聞こえた。


「えっ! き……着れたけど……」


「んじゃ開けるなー」

 旬の手がカーテンにかかった。


「えっ……ちょっと、待っ……」

 奈津美が言う前にカーテンが開き、目の前に旬が現れた。


 旬はカーテンを掴んだまま、笑顔で固まってる。


「ちょ……ちょっと旬! 開けていいって言ってないのに、何で開けるのよ!」


 今は着替え中じゃなかったからいいが、もし脱いでる途中だったりしたらとんでもないことになっていた。

 ……いや、今はそういうことだけじゃなく。心の準備も出来ていないのに。


「ナツ、可愛い」

 旬が呟くように言った。


「ナツ、いいじゃん、それ! めちゃくちゃ似合ってる!」

 興奮した状態で旬は奈津美に言った。