「すっげー。カンドーした。俺んち、母さんが手抜きでさぁ。クリスマスは買ってきたフライドチキンだったし。しかもケンタとかじゃなくてスーパーの惣菜のとこで買ってきたやつ」


「それが普通よ。旬のお母さんだって忙しかったんだろうし。あたしは暇だったから」

 そう言いながら、奈津美は気合を入れてローストチキンにして良かったと思った。


 昨日一日を、今日の料理を作るのにあてたといってもいいくらいだ。


 幸いにも、旬はクリスマスのために昼も夜もバイトに入っていたので、長い時間連絡を取ったりはしなかった。


 料理本をみたりしてどんなメニューにするか考え、品薄になる前に買出しに行き、下ごしらえは、昨日のうちに完璧に済ませておいた。

 フライドチキンにするかローストチキンにするかは、奈津美は最後まで悩んだところだ。


 毎年恒例のCMを見ていたら、フライドチキンを食べたくなってくるものだが、年に一度のクリスマスだし、気合を見せようとローストチキンに挑戦した。

 味がうまくいってるかだけが不安だが……


「あ、そうだ。これ、ケーキ。買ってきたよ」

 旬が箱の入った袋を掲げてみせた。


「あ。ありがとう。あとで食べようね」


 ケーキを受け取ってみてみると、箱の形がほぼ正方形だった。予想はしていたが、二人なのに、ホールのケーキを買ったらしい。


 そしてこれのほとんどは、旬の胃袋に消えるのだ。