その時、旬の目がパチッと開いた。


 今起きた、っていうんじゃなくて、まるで起きてたみたいに……



「……おはよ、ナツ」

 寝起きの割にはっきりした声で、旬は言った。しかも、口角が上がっている。


「何かナツ、ずっと俺のこと見てたでしょ」

 旬がニヤニヤしながら言った。


「なっ……」


「もー、ナツってば俺のこと熱烈に見てるからさぁ。いつ起きようかなぁって」


 旬は頭を起こして、枕をベッドの端にずらして、その上に頭を乗せ直す。


「おっ……起きてたの!?」

 あたしの目の前に旬の顔が来て、思わず仰け反った。


「うん」

 旬はすばやくあたしに顔を近づけてきて、チュッと、唇を当ててきた。


「そんな俺に見とれてた?」

 何だか嬉しそうな旬の笑顔は、とても可愛くて……


「バカ!」


 パシン!


 旬の頬を思い切り叩いてしまった。


「いてぇ! えっ!? 今のそんなにダメだった!?」

 旬が頬を押さえながら、目を丸くしていた。


「知らない!」

 あたしは旬に背中を向けた。


「え? ナツ?」


 旬はわけの分からない様子で、あたしのことを呼んだけど。


 悔しかったから、なんて、絶対に教えてあげない。




~END~