「ナツー。怒んなよー」


 あたしの思ったことが顔に出たのか、旬はあたしの頬を両手で包んだ。


「俺はね、嬉しいんだよ? ナツがドキドキしてると」


 旬の右手だけするっとおりて、あたしの胸に触れた。


「こうしてるだけで、ナツは俺のこと好きなんだなーって、分かるから」



『誰よりも大好きな人と居て、こんな風にならない人なんて、いるわけないじゃん』



 さっき旬が言ったことが、頭の中で繰り返された。


 あたしのこのドキドキは、旬のことが、誰よりも大好きだから……?



「……何勝手なこといってるのよ」


 恥ずかしくって、照れ臭くって、ついそんな風に言ってしまった。


「あ、やっぱり?」


 旬は口元を緩ませてそういったけれど。


 きっと、本当の理由は、旬の手のひらを通して、バレてるんだろう。



~END~