「……俺だって緊張してるよ? それに、すっげードキドキいってるし」


 旬が何でもないことのようにいう。


「……嘘」


 あまりにも普通にいうから、私は信じられない。


 だって、それが本当に緊張してる人の言い方なの? っていうくらい、あっさりしてるから。


「そんな嘘ついたってしょうがないじゃん。ホントだよ。……ほら」

 旬はあたしの手を取って、旬の胸元に当てた。


「あ……」

 手のひらに、旬の心臓の動きが伝わってきた。


 すごく大きくて、早くて、あたしと同じくらいに、ドキドキしていた。


「分かる? 俺だって、いつもこうなんだよ」


「いつも?」


「そうだよ。今日だけなわけないじゃん」

 信じられない。

 だって、いつも旬は余裕に見えてたのに……


「誰よりも大好きな人と居て、こんな風にならない人なんて、いるわけないじゃん」

 旬はギュっとあたしの手を握った。


「まして、俺の場合はナツなんだし」

 ちょっとはにかんで言われて、あたしの顔は熱くなった。


「で……でも! 旬、さっき、いつもドキドキしてるって……」


 それは、まるでそうなることがおかしいことのように、珍しいことのように言っていたのに……


「あれは、ちょっとイジワル言っただけ。ナツってば、ドキドキしてて可愛いから」


「なっ……何よ、それ」

 まさか、からかわれてたの?


 旬は自分のことがバレてないからって、他人事みたいに、あたしのことからかってたの?