「本当、可愛いなあ、ナツ」


 旬はあたしの膝を開いて、あたしの全てを見る。


 そして、手や唇や舌で触れて、あたしを愛してくれた。


 頭の中は真っ白になりながらも、心臓の鼓動の激しさは増す。


 だからか、と、今やっと気付いた気がした。


 旬は、あたしのことを、隅々まで、隈なく愛してくれるから。

 旬に全てを晒すあたしは、不安になってしまう。

 五感であたしのことを感じ取ってくれる旬に、何か一つでもおかしなことに気付かれたら。


 何か旬の気に入らないところがあったら。


 そう思うと、不安で不安でしょうがない。


 だけど、それに勝るのは嬉しいという気持ち。


 旬が、全身で愛してくれてるのが分かるから。


 旬に見られるたびに、触れられるたびに、それが伝わってくるから。

 だからあたしのこの胸の鼓動は、全く収まることがない。


 今まではそんなことはなかった。


 それはきっと、旬じゃなかったから……




「何か……」


「ん?」


「何か悔しい」

 あたしが言うと、旬はキョトンとしていた。


「いつも、あたしばっかり緊張して、あたしだけドキドキしてるみたいで……旬は余裕みたいなんだもん」


 23にもなって、あたしは何女の子みたいなことを言ってるんだろう。


 でも、旬よりも年上のあたしは、旬よりも余裕でいたいのに。


 初めて年下と付き合ったのに、今が一番余裕がない。


 だから、悔しい。