「旬、大丈夫なの? ちゃんとできる?」
とりあえずそれだけは心配なので、旬に聞いた。
「大丈夫だよ。俺、いっつもレンジとレトルトの生活だから」
胸を張って言う旬を見て、なんだか情けなくなった。全く胸を張れるほどのことではないのに。
まあ、やったことがあるのなら、まだ大丈夫か。(それでも不安だけれど)
「……何かあったら、ちゃんと言ってよ?」
「うん。でも大丈夫。ナツは安心して寝てて」
奈津美の優しく頭を撫でた。
「……うん」
奈津美が頷くと、旬はニコッと微笑んで、台所に行った。
奈津美は布団を引っ張って、鼻先まで布団をかぶった。
すると、旬の匂いがした。
いつも、一人で旬の布団で寝ることがないから気付かなかったが、ここは旬の匂いで一杯だ。
そしてそれが、とても安心できる。
だんだんと瞼が重くなってくる。さすがに、さっきのあれで疲れたのだろうか。
不安なことには変わりないが、今日は旬が任せろと言ってくれている。
たまには、それに甘えてみるのもいいかもしれない。
そう思って、奈津美は睡魔に誘われるまま、瞼を閉じた。
ガッシャーン! カランカラン……
……落ち着いたそばから何の音だ。
奈津美はゆっくり体を起こし、ベッドから降りた。
「旬……どうしたの?」
台所に向かうと、旬が床にしゃがみ込んでいた。
「あっ、何もないよ! 鍋落としただけ!」
旬は慌てた様子で床に散乱した鍋を拾っている。
何と、流しの下の収納に入っている鍋が全部出ていた。
「……何してたの?」
「いや、鍋どれ使ったらいいかと思って、とりあえず全部出そうとしたら手が滑って……」
旬はまるで怒られるんじゃないかと思っているかのようで、ビクビク奈津美を見上げながら言う。
「……そう。それだけならいいけど」
ざっと辺りを見渡した限りでは、それ以上のヘマは(まだ)していないようだ。だから、奈津美は特に何も言わないでおく。


