「大丈夫よ。よっぽど悪かったら自分で分かるから」
「いいから計って! もー!」
「きゃあ!」
旬は奈津美に飛びかかり、体温計を持った手をパジャマの裾から差し入れる。
「やっ……ちょっと、旬! ……ひゃ!?」
腋の下に旬の手が触れ、奈津美は奇声を上げた。
「ちょっと……何すんの!」
「熱計んの! 大人しくして!」
「そんな無理矢理しなくても……」
ムニッ
「きゃあ! 旬! どさくさに紛れて胸触らないでよ!」
「おしおきだーい」
「意味分かんない!」
――数分後。
……疲れた。
検温中の奈津美は、ぐったりと横たわっている。
ちなみに旬は、奈津美を後ろから抱え込むようにして、まるで大人しくできない子供にするように、体温計を挟んでいるほうの腕を押さえている。
何だかもう、今ので大分体力を削られたような気がする。
抵抗した奈津美も奈津美だが、何でここまで無理矢理にされないといけないのか。
ピピッ
体温計が鳴る。
奈津美が動く前に、旬がパジャマの胸元に手を入れて体温計を取る。
奈津美はもう動くのも辛い。
「……三十七度九分。ほらー。大人しくしてないから上がったんだー」
体温計を見て、旬は言わんこっちゃないとでもいうように体温計を見せてくる。
上がったといっても、一分だけじゃないか。
それに、もし何か原因があるとしたら、絶対に旬のせいだ。
「とりあえず、ナツは大人しく寝てて! 俺、お粥用意するから!」
旬がそう言って奈津美に布団を掛け直す。
だから、何で奈津美が大人しくできないしょうがない奴のようになっているのか。納得できない。
文句の一つでも言ってやりたいが、もうそんな気力はない。


