「よし! ナツ、何食べたい?」
気合のこもった声で旬は言う。
「……あんまり食欲ないし……消化のいいもの。おかゆとかでいいから」
「おっけ! おし! じゃあナツ、どうやって作ったらいい?」
旬は腕をまくり、やる気満々の様子である。
「ちょっと待って。旬に頼むつもりはないから」
旬がやる気満々なのは分かるが、まさか普段全く料理をしようともしない人間に頼むなんてことをするはずがないだろう。
「えっ……じゃあどうすんの?」
旬が驚いた様子で言う。
逆に、旬がどうしてそこまでやる気なのかが、奈津美には分からない。
「レトルトでいいから、買ってきて」
「えっ……それでいいの?」
「うん。それで十分だから」
むしろそうでないと、安心して食べられない。
「旬の分も、自分で何か買ってきてくれる?」
「うん、分かった」
「……ごめんね、作ってあげられなくて」
よく考えたら、旬だって病み上がりのわけだし、買ってきたものであんまり栄養の偏ったものは避けるべきだった。
「ううん! 俺は全然平気だよ。じゃあ、すぐ行って帰ってくるから。なんかあったらすぐ連絡してな?」
そう言って、旬は奈津美の頭を撫でた。
「うん……お願いね」
「おう! 任しとけ! んじゃいってきます」
旬が手を振ったので、奈津美も布団から手を出して手を振った。
旬が出て行き、部屋は静まり返る。
何だか変な感じだ。
旬が買い物に行って、奈津美が留守番なんて。いつもは逆なのに。
……落ち着かない。
旬はちゃんと買い物をして帰ってくるだろうか。
いや、旬だって普段は普通に買い物して生活しているわけだから、別に心配するほどのことではないのだが……
それでも心配するなというのは無茶な話だ。


