これは、旬が風邪をひいた翌日のお話。



 奈津美はその晩、旬の部屋に泊まった。

 旬も体調が悪かったし、別にそれは構わない。……と、思っていたのだが、それで泊まったのではない。

 まだ微熱の旬に襲われて、何となく流されるままに旬の部屋に泊まることになったのだ。


 夜になれば、旬の熱はもう下がっていて、心配ないだろう、ということを旬が自己判断で言った。

 そしてまた、奈津美に夜の交渉を求めてきた。

 この場合奈津美は断れた試しがなく、結局いつものようになってしまった。


 全ては、これが原因だったのかもしれない。




 明け方に、奈津美はふと目を覚ました。


 何だか肌寒い。

 体を動かして布団を掛け直そうとしたが、動けない。


 何でかと思ったら、旬が、奈津美の体に腕を巻きつけたまま眠っていた。


 いつものことなので、それには何とも思わない。

 むしろ、寝ている間もこんな風に抱き締めてくれるのを、愛しく思う。


 しかし、このままだとうごけないので、しょうがなく、動く範囲で手を動かして布団を探った。


 しかし、その範囲には掛け布団らしき感触はなかった。


 あれ?


 足を動かしてみても、その感触はない。


 何で……


 奈津美は首を持ち上げて見てみた。


「ちょっ……」

 思わず声がでてしまった。


 掛け布団は、全部旬の体が巻き込んでいて、奈津美は裸のまま何もかけていない状態だった。

 これでは寒いはずだ。