涙が止まらないのに電車には乗れなくて、
近くのタクシー乗り場まで歩いた。

お互いが納得した別れだったのに
止まらないなんておかしい話だ。

でも私、そんなに強くなくて…
もう涙を止めることもしなかった。



夜の繁華街で女ひとり泣きながら歩いていたら
それは格好の餌食となり、さっきから何度も声をかけられた。

キャッチだったりナンパだったり…
そんなもの興味がない。

なのに、なんでだろう…あなたの声は耳が拾ったんだ。




「これ、使って」




差し出されたのは真っ白な
端っこにピンクの花が刺繍されているハンカチ。

みるからに女物だけれど、その持ち主は男性だった。