3月13日は私の誕生日。

彼氏だったら、彼女の誕生日を忘れるわけがない。

それが普通だと思っていたけど。


「もう3月だね」

「ああ、そうだな。花粉が来ているのか目がかゆくて、鼻が詰まり出した。笠井、お前は大丈夫か?」

「あ、うん。大丈夫だけど」

「ヘッ、ヘックシュン!! おのれ、花粉めえ!!」

「……大丈夫?」

「ああ、大丈夫だ。…ヘックシュン!!」

辛そう、本当に辛そう。
花粉は辛いって聞くから、わかる。
けど、けど。

「あのさ、13日なんだけど」

「13日?それがどうした?」

「え?私の…」

「へ、ヘックシュン!!」

「……」

「すまない、13日会う約束でもしてたか?」

「もう、いいです。花粉、お大事に」

私はそう言って、ズカズカひとり歩いていった。

彼のその無神経な態度が嫌いだった。

「もう!!私より花粉かよ!!」

そう、呟きながら家に帰った。

それから、彼からのメールや電話も全部シカトした。
学校で会っても、無視。
話したくない。

「何をそんなに怒らせたんだ?」

っと、彼は私に質問してくるばかり。

「そんなの私に聞くなあ!!」

そして、数日後。
私の誕生日当日ー。
彼から誕生日メールも電話もない。

「本当に知らないんだね」

って、思いながら
友達に誘われていたので、出掛けて行った。
そして、待ち合わせ場所へ。

そこには、真っ黒の帽子に真っ黒の服を着た彼が立っていた。

「え?」

「なんで?」

「あ、笠井。あの、そのすまない。誕生日を忘れていて」

「え?」

「笠井が怒ってる理由を松田に言われて、それで松田がじゃあ、ここにきて謝れば?といわれて」

「まみちゃん……」

「本当にすまん!!」

「許さない」

「すま…ヘックシュン!」

「……花粉辛いんでしょ?」

「ああ、辛いが笠井を怒らせてしまったことの方が…」

「もういいよ、まみちゃんにお礼いわないとね?」

「ああ、そうだな。へ、ヘックシュン!!」

「あ、誕生日おめでとう!」

誕生日忘れられてショックだったけど。
花粉辛そうだしね?
謝ってくれたから許す。
なにより、まみちゃんに感謝。

結局、この日は一生分のクシャミの音を聞いた気がする。

早く花粉の時期終わるといいね。