「宮戸さんに香水のこと言われるの、これで二度目だね」



「えっ!?
そ、そうでしたっけ?」



言われても全く記憶にないものだから、何か失礼なことを言っていたのではないかと冷や汗をかく。
けれど先輩は口元に柔らかい笑みをたたえたまま私を見つめる。



「覚えてないと思うよ。去年の宮戸さんの入社説明会のときだから」



「ええっ……それじゃあ覚えてないです!
たぶん朝霞先輩のこと全く認識してないですもん!
先輩こそよく覚えてますね…」



「んー、まあ、少し嬉しかったから、かな」



「えっ、なんだろ。教えて下さい」



「ま、機会があったら、ね」



「えぇー!」



そんなオイシイことを何で自分は忘れてしまったんだー!と頭を抱える。
頑張れあたし!きっと深層心理では覚えているはず!



「いまこそ自我を解放するとき…!!」



「宮戸さん?駅着いたよー」



「はっ」