「しかしどうせ毎日あげるかあげないか
散々迷った挙句あたしに渡す羽目になるんだから昼休み食ってしまっても変わらんだろう」



そう言いながら彼女は99枚目のクッキーをぽいっと口の中に入れる。



「うう……」



そう。
あの日早百合さんにアドバイスされてからもうすでに10日は経っている。



あれから毎日作っては持ってきてやっぱりどう渡せばいいか迷ううちに須藤先輩に食べてもらう(というか気付いたら食べられている)生活が続いている。



「で?あたしに相談したい事があるとか言っていたがあと10分で昼休み終わるぞ。早よ言いたまえ」



手持ち無沙汰になったのか、休憩室に常備しているチョコレートの袋を開けつつ須藤先輩は私を見た。



そう、実は少し困ったことになったのだ。



「実は今日の朝、先輩のお母様からメールが来てですね……」



その内容というのが今回の議題だった。



『やっほー依ちゃん!クッキーはもう作ってあげてみたかしら?
今回は朗報を掴んだからお知らせするわね!
実は今週の土曜日、静樹がショッピングモールの映画館に行くみたいなの。13:00からの【君の声】っていう映画らしいからもし良かったら偶然って事にして行ってみたら距離を縮められるんじゃないかと思って。
お節介かな、とも思ったんだけど、行くか行かないかは依ちゃん次第よ。
とりあえず、おばさんは応援してるわ♪じゃあね♪』



「……なんというか、凄いお母さんなんだな……」



須藤先輩の感想に私は頷く。