俺は……あの子を傷つけた。
それは変わりないのだから……。
好きな気持ちは隠すんだ。
大好きだからこそ、愛してるからこそ、隠すことも大事だろう?
あの子には、未来がある。
俺には未来はやってこない。
「宮水さん!おはようございます!」
俺は屋上に昼休みに来るようにしている。
女の子は好きじゃない。
俺を道具にしか扱わないんだから……。
だから、無口の無表情を貫いている。
男子も余り近づいてこない。
こいつは次元が違う。
……そんなはずないだろ?
俺は今ここに存在している。
存在を………無視されることのない世界。
そんな世界あるのかな?
どっかの王子様みたい。
そーだね。
優しくしてる覚えはないし…、だからってなんで王子様?
俺は主役のヒロインじゃなくていいのに……。
俺は…木でも、家来でも、一般庶民でも…なんでもいいよ。
皆で俺を作り上げないでくれ……。
俺は毎日……バランスボールの上にいる。
ガタガタな地面にボールを置かれて…ピエロみたいに演技している。
「弓野繰明…」
俺は空の色を見ながら…呟いた。
前に絡まれてる所を助けてあげた女の子。
俺は一目惚れした。
美しい泣き顔に…。
綺麗な微笑んだ笑顔に…。
ぎこちない…言葉に。
なぜだか、名前を聞いて…落ち込んだ。
だって…中学生だったから…。
俺じゃ幸せには出来ない…そう思った。
「繰明ちゃん、おはよう」
一個年下の繰明ちゃん。
昼休みは必ず俺の元に来てくれる。
「宮水さん、お弁当如何ですか?…作って来たんです!」
そう言ってお弁当を差し出してくれる。
「…ありがとう」
俺は…繰明ちゃんの前では、心からの笑顔を向けることが出来た。
きっと…凄いパワーを繰明ちゃんは持っているんだと思う。
俺は…女の子嫌いだし、好き嫌いが激しい。
お弁当を開けると…カラフルな野菜たちにタコさんウインナー。
それて…キャラクターをご飯で作る…繰明ちゃんの可愛さに思わず少し笑えた。
「ど、どうして笑うんですか!?」
少しプクッと膨らますその可愛さも、全てが可愛らしい。
「…俺のモノになんないかな…」
俺は空を見上げて呟いた。