「…ぃたぁーー」

あたしは思いっきりこけている。

どうして急に軽くなったの?

あたしは立ち上がってスカートに着いたゴミなどを払う。

「弓野…繰明さん?」

あたしはこの声を知っている。

優しくて…温かい声を。

「…」

あたしは扉の方を見ると…、扉の真横に立っていて…。

…まさに美形。

王子様だ!

やっと会えた!

あたしが、王子様に近づいた時…、扉がまた開いた。

そこには……、

「ユーリ…どうして」

無表情のユーリが立っていた。

「繰明………そいつに近づいちゃあかんよ」

ユーリは低い声で呟いた。

どうして?

王子様は……刹那そうに微笑んだ。

「…初めまして、宮水悠貴です」

………え?

初めまして?

どー言うこと?

あの時と同じ名前。

なのに…何でよ?

あたしを覚えてないの?

…あんなの…覚えてくれてるはずないか…。

それはあたしだけの空想の王子様。

そーだね。

「…………………初めまして!弓野繰明です!」

あたしは人生で一番の笑顔を宮水さんに向ける。

目からは大量の涙。

笑ってるのに、泣いてるあたし。

悲しかった。

悔しかった。

あたしだけしか、考えてなかった。

「……繰明…」

ユーリは苦しそうにあたしを見つめている。

あたしはずっと王子様を捜していた。

ユーリの手が頬に当たって、……思わず払ってしまった。

「っ…」

驚き顔のユーリ。

「ご、ごめん!……お、驚いちゃって…」

…あたしは幻想の王子様を思っていた。

ただそれだけだった。

「…繰明ちゃん、…僕の為に泣かないで?」

困ったように微笑む宮水さん。

「…あの時のままですね、良かったです。貴方がそのままで居てくれて…」

あたしは宮水さんに微笑みかけた。

この表情は前にも見たよ。

もう、困らせることはしない。

そう誓うから…泣きそうな顔しないで?

「…………絡まれた時に…助けてくれた宮水さんがあたしには…王子様に見えました。思い出さなくていいですよ」

あたしは平気だから…。

好きでいさせて下さい。

「…よろしくお願いします」

そうだ。

それでいいよね?

これから、まだ時間がある。

空は優しいから…あたしを優しくて包んでくれる。

空の色は…あたしの色にしたい。

宮水さんの心にもこの色が届きますように…。