「一旦乗れよ」



そう言われて、



あたしは大人しく車に乗った。



音楽が聞こえるだけで後は何も聞こえない



静かな空間。



チラリと先生を見れば



真っ直ぐ前を向いて運転している姿が



目に映った。



松野蓮(マツノレン) 24歳



あたしの担任で、数学担当。



女子から凄いモテて



告白もされているという。



「…お前が1日目で居なくなって大騒ぎになったんだよ」



ハハッと笑いながら運転する先生。



……そんなの知らない



あたしが居なくなっても



知らんぷりしてたんでしょ?



先生はこの学校に来て、



3年目の教師。



女性の先生からもモテている。



ベテラン教師だ。



「なぁ、優」



「…何」



あたしがやっと一言話したからか



先生は、嬉しそうな顔をした。



「お前、俺の事どう思ってる」



嬉しそうな顔をしたかと思いきや



突然真剣な顔つきになった



…は?



この人頭、大丈夫?



「アンタんこととかじゃなくてあたしは人が大嫌いなの」



「何で、そう思う?」



何でって言われても1つしかない。



「それは…外見しか見てないし、それに…上辺だけ。教師だからって偉そうにして。生徒の事何にも分かってない!!!」



あたしは教師と家族と友達が



1番大嫌いだ。



あたしの話を聞いた先生は、



「そっか。お前は俺の事もそう思ってんだな?」



あたしはギロリと睨み



「そうだよっ!所詮教師って大体そうじゃん!!!親の顔色、生徒の顔色浮かがって、直ぐ何かあると教師面してさ!!!アンタも同じなんで…」



そういおうとした時止められた。



いや、違う。



先生があたしの口に手を添えたんだ。



「ハッ…お前がそう思ってるとはな。思ってもみなかった…だかな優。俺は違うぞ。俺は教師の仕事が好きだ。だからそんな事は絶ってぇしない。」



目を捉えられて、



何にも抵抗出来なかった。



嘘だ!!!



みんな、同じ事を言う



『俺は違う』



そう言ってみんな同じ事をする。



あたしには分かってるんだから!!!



あたしはもう一回ギロリと睨んだ。



もう人なんて信用しないって



決めたんだから。



あたしはコイツも信用しない。



そう心に誓った。