「であるからしてーこの二学期はー…」
校長のかったるい話を聞き流しながら、私はとある先生のことを考えていた
そう、鈴谷 祐だ
そいつは今、体育館のはじっこで校長のかったるい話の後の新任の教師紹介を待っている
普通に立っている
なのに
「ねえねえ、あの人が新任の先生じゃない?」
「うわあ!イケメンじゃん!」
「え?あの黒髪メガネの人?」
「かっこいいじゃん!イケメンじゃん!」
「ヤバイ…あたし恋しちゃったかも…」
一目みただけで恋とかお前の脳内お花畑だな。
まあ、そういうのを一目惚れとか言うんだろうが
とりあえず、鈴谷さんは完全に黄色い声を浴びていた
確かに、顔立ちは整ってるな
男子まで見惚れてるくらいだし
「ねえ!雪!ヤバイ!かっこいいよ‼︎」
まあ、そりゃあ夏子が興奮して何回も話しかけてくる訳だ、正直ウザい
ていうか誰も校長の話聞いてない
誰か聞いてあげろよ、校長涙目だぞ
あ、いつものことか。
『校長先生ありがとうございました』
生徒会役員がアナウンスする
誰も校長の話聞いてなかったけどな
『では、次に新任の教師紹介を行います』
皆の期待の眼差しが教壇に移る
『では、鈴谷祐先生、お願いします』
鈴谷先生は教壇に上がる
黄色い声はワッと広がる
それを他の先生が静止させようとする
『今後から、産休の新野先生に変わりまして田部先生とともに理科を担当させていただく、鈴谷祐と申します。』
静かに言う
黄色い声は止まない
馬鹿なのか、こいつら
どう見ても目が死んでいるだろうこいつ
ああ、もう早く終わってほしい
そして、黄色い声の賛美と共に、二学期の始業式は終わった

