「あら?雪ちゃん」
行く途中、廊下で横尾先生と会った
横尾 円、よこお まどか
横尾先生は保健室の先生で、女
私がこういう性格(性質?)なのでよく保健室は利用しているから横尾先生とは結構話している
「どこ行くの?」
さすがに先輩の忘れ物を取りにいくとは言えない
「いえ、ちょっと理科室に忘れ物をした
ので」
「美術部だからスケッチブックとか?」
「あ、はい。当たりです」
横尾先生とはそんな他愛のない会話をしている
それが、一番しっくりくる
学校に登校して、友達に挨拶して、友達と話して、授業を受けて、たまに横尾先生と話して帰る。
好きな人なんていない、リア充にはならない人生だ
これでいい。
そう思っていた
コツ
足音が理科室方面の廊下から聞こえた
人影が現れる
「ん?…ああ、こんにちは」
横尾先生がその人影を見て、挨拶する
私もつられて、その人影に目をやる
知らない人だ
知らない人は興味がない。
なのに
「…こんにちは」
人影は先生と私を見て、挨拶をする
私が、挨拶を返す
人影は、通り過ぎる
私は背筋が凍った
青ざめる
「…雪ちゃん……えーと…さっきの人は
ね…二学期から…臨時の新任で来る先
生なんだけど…何かあったらしいのよ ね…」
その人影は目が、死んでいた
生気を失っていた。
真っ黒く、闇だった。

