時間は残酷にも過ぎていき、既に6時を過ぎてしまった。
私の家は門限が厳しいので、7時までに家に帰らなければならない。
逆算すると、今から駅に戻らないとハルを見送ることができない。

「そろそろ帰ろうか。うち、7時までに帰らないとうるさいんだ」

「もうそんな時間か、じゃあ、帰らないとね」

行こうか、そう言って、彼は歩き出した。
私もその後ろをついていく。

ねえ、寂しくないの。
残念がらないの。
どうしてそんなにスタスタ歩いてっちゃうの。

私はすごく、寂しいです。
もっと一緒にいたいよ、ハル。

そんな気持ちは声になることなく、少し冷えてきた夏の夜風に気圧されて、私の中に沈んでいった。


駅に着くと、ハルが乗る電車は15分後にくると分かった。それまで、待合室に座って待つ。

「陽子の時間は大丈夫?」

「うん。チャリで5分とかからないし」

「そっか、良かった」

実は嘘だ
チャリでも10分はかかってしまう。
だけど、どうしても、ハルが帰るギリギリまで一緒にいたかったのだ。