こいこころ

 映画が終わって映画館を出た。私はラストシーンでも泣いたので、ぐすぐすと鼻をすすっていた。

「陽子ー泣きすぎー」

「だってー・・・」

「陽子、途中も泣いてたよなー」

「あれはさあ、お父さん先に死んじゃうとか、思わないじゃんかあ」

私が落ち着くのを十分待ってから、ハルは時計を見てうなった。

「1時半か、ご飯時には微妙な時間だよな・・・」

「私あんまりお腹すいてないかも」

「じゃあさっきのショッピングモールで、コーヒーでも飲もうよ。早めのおやつ、遅めのブランチってことで」


私はそれに賛成して、ショッピングモールに入っているコーヒーショップのチェーン店に入った。
この頃には二人の緊張もほぐれてきていて、ごく自然に向かい合った席に着いていた。

「俺、このチェーン店が好きでよく行くんだ」

「そっか、ハルはコーヒー派かあ」

「もしかして陽子は紅茶派?」

「コーヒーも好きだけど、紅茶のほうがよく飲むよ」

二人でメニューを覗き込み、どれが美味しいだの、これが新作だのと聞きながら吟味する。
ハルはスタンダードコーヒーとホットサンドを、私はカフェオレを注文した。