こいこころ

映画が終わる頃には、先程までの動揺は収まっていた。

本編の上映中、一度だけハルの顔を見た。
主人公の夫が、不慮の事故で死んでしまったシーンだ。
雨に打たれながら、二人の子供を抱え、主人公は泣いていた。
釣られて私も泣いてしまい、ふとハルのほうを見た。

すると彼は泣いている私に、大丈夫だよ、と声を出さずに口を動かしたのだった。


そのおかげで涙が引いていった。

安心したのだと思う。

何に安心したのかは分からない。

何が大丈夫だったのかも分からなかったが、私の心は柔らかな絹で包まれたかのように、暖かくゆるんでいった。