こいこころ

映画の予告が流れだす。
邦画、アニメ、ホラー映画・・・そして洋画のラブコメディ映画の予告が始まった。
画面に映る女優を見て、ハルが耳打ちしてきた。

「この女優さん、陽子に似てるね」

私はびっくりしてハルの顔を見た。
薄暗くてよく見えないけれど、優しい微笑を浮かべている。
やわらかな眼差しが、私を射抜く。

「すごく、綺麗」

どきん、とした。
それからバクバク鳴り響く鼓動。
違う。
綺麗なのは女優さん。
私に言ったんじゃない。

違う。
違わないと、そうじゃないと。




勘違いしちゃいそう。




「あ・・・りがとう・・・」

私は蚊の鳴くような声で礼を言った。
ちょうど予告が終わり、本編が始まった。
これ以上ハルになにか言われたら、心根を口にしそうだったからほっとした。
先ほどのことを思慮の外にしようと、必死になってスクリーンを見た。