「本日発売!大人気RPGドラモンクエスト2!初回限定品には初回生産限定クエストがついて登場!」
店員が売り出しているそれは、まさしくあたしが欲しかったドラモンクエスト2。
今日のためにバイトを頑張ったけど、水の泡…。しかし、初回限定に限定クエストがついてくるとは聞いてなかった。
欲しい…欲しくて喉から手が出そう。
「うわっ!だ、誰かそいつ捕まえて!」
どこからか悲鳴が上がる。
どうやら盗難事件が発生したようだ。
あたしには関係ない。無視無視。
…無視をしようにも無理があった。
その犯人があたしの方に向かってきたから。
やばい!にげよう!
そうおもった…けど、犯人が抱き抱えている初回限定品のボックスをみて思考が一転した。
「どけ!じゃまだ!」
「ふざけんな…それを求めてどれだけの人々が手に汗にぎり金をつくったか、わかってやってんのか!」
「!?うわっ!おま、なにすんだ!」
「どうせオークションで売りさばく気だろ?そんなの許さない!」
昔柔道を習っていたあたしは、巴投げで犯人を討ち取った。
「おぉ…」
周りからは拍手喝采の大嵐。
あたし、こんなに喋れたんだなぁ…
「あ、あの!ありがとうございます!」
話しかけてきたのは大人しそうな男の人。
一般世間で言う、イケメン。
「お礼といってはなんですが、その初回限定品、受け取ってください。」
え…?くれるの?
……いや、この人が買ったものだ。
もらうわけにはいかない。
「いえ、あなたのゲットした戦利品です。受け取れません。どうか楽しんでプレイしてください。」
「…わかりました。あなたの分まで楽しみます。ありがとうございました!」
あたしはその人に一礼して、現場を後にした。生徒手帳を落としたのにも気付かずに。

「椎名空…かぁ。」