「──そろそろ行こうか。」



 空渡さんの声で立ち上がり、私達はカフェを後にした。腕時計を見て、随分長い間思い出話をしていたんだと気付く。楽しい時間は、やっぱり刹那的だ。

助手席のドアが開けられ、私はスッと車内に乗り込む。この動作にもやっと慣れた。空渡さんが運転席に乗ると、駅までのドライブがスタートした。



 走行距離はそんなに長くない。だけど、ほんの僅かな時間も大切なんだ。空渡さんと居るとそう思わされる。

駅の駐車場に車が止まり、シートベルトを外した私に空渡さんが少しだけ距離を詰める。緊張の一瞬だ。



「いつか陽富さんのご両親に挨拶に行かなくちゃね。」

「……え?あ、はい…」



 彼にはまだまだ謎な部分が残るけど、それはそれで良いのかも知れない。恋は予測出来ないから楽しいんだ。先が読める物語なんてつまらない。



「じゃあ、また!」

「うん。お休みなさい。」



 走り去る車を見つめながら、いつか「ただいま」、「お帰り」なんて会話を交わす日が来るのだろうかと思う。

未来のことはまだ分からないけど。17歳の年の差を歯牙にもかけず、私達は恋のレールを走り続ける。



fin.
→後書き